20代で知っておきたい仕事・組織のこと

30代経営者@福岡が僕よりも若い人たちに教えたい仕事・組織・キャリアのことを書きます。

「強み」について考えたこと

経営者@福岡のハリーです。

このブログは「20代で知っておきたい仕事の進め方」というコンセプトから立ち上げました。

現在、20代の人たちと接する機会があり、一緒に仕事をしていて色々と思うことや、過去の自分を振り返って気づかされることが多くなってきたので、それらをまとめて伝えたいなと思っています。

 

その端緒として、よく世間で言われる「強み」について色々と考えることがあったので、Evernoteに書きとめた文章を多少編集してこちらに掲載しておきます。

自分の覚書用に書いたものなので、である調です。

 

強みをめぐる偶然

○○さんからはクレジット(信頼性)・レア(希少性)を高めるための三角形の頂点に当たるものは何かという問いを急に受け、
○○君からはStrength Finderを利用した結果をメッセージで送られた。

土日の2日間で起きた偶然の出来事に驚いたが、たまたまそうだっただけかもしれないし本に書かれていた「自分の強みが何か」を読んで、考えていたことでたまたま引き寄せたのかもしれない。

強みについて色々考えたが、そういえば以前も考えたことがあるのだった、と思いだした。

会社を辞めてしばらく経ってから、色々と人と会ううちにどうしたものか、と考えていたときのことだったと思う。

社会に貢献できること、人の役に立つとしたら、いったい自分には何ができるか。
それを突き詰めて考えていったときに、答えは「人よりも勉強をする」だった。

他にも色々とあるのかもしれないし、科学的に見たら違うのかもしれない。
が、「これしかないな」と思い当たった。

もちろん、僕よりも勉強ができる人はほかに腐るほどいる。医者、弁護士、公認会計士、その他の資格。

しかしビジネス領域に特化すると、勉強している人ってあんまりいないんだなと思ったので、それは強みになるだろうと思った。もちろん、これからもっとすごい人に出会うのだろうけど。

 

「これしかない」こそが強み

さて、「これしかない」というのはキャリアで考えるとそんなに前向きではないんだろうか。

突然だが、僕はクラシック音楽が好きで、人前で音楽について話す機会に恵まれている。

これまで、バッハ、モーツァルトベートーヴェンとキャリアの観点から研究してみて、彼らはまず類まれな音楽的な才能を持って生まれた天才だったことは間違いない。

しかし、よくよく調べると彼らには音楽以外のものがない。

大金をつくる商売っ気があるわけでもない、なにかリーダーシップを発揮して組織や団体をつくりあげたわけでもない。
むしろ、金銭的には困った方だ。

バッハは、家庭を養うために少ない給料であくせく毎日忙しく働いて過ごしたし、モーツァルトは散財が激しく富豪の友達に借金したし、ベートーヴェンも体調の悪化や甥の貢献問題をめぐって収入が減った時に、嫌いだった不動産王の末弟に頼んで借金までした。

そんな天才たちは、キャリアの岐路に立ったときに「音楽しかない」と思って進んだ時期が見られるように思う。

3人は、子どものときから音楽にずっと触れていた。
そして、大人になってからも結局そこで歩む自分しか想像できなかったのだろう。ある意味、音楽に縛られていたのである。

18世紀ごろのヨーロッパの平均寿命は短い。30代後半まで生きれば十分な人生だった。
それを半分まで生きた20歳前後で、変えることなどできただろうか。才能が生かされた反面、縛ることにもなった。音楽こそが唯一の選択肢だった。それが単なる事実だ。

人の「強み」ということを考えたときに、突き詰めていくと「自分にはこれしかない」と思えるものにぶち当たる。

おそらく、それこそがその人にとってコアな強みだろうと僕は思う。

 

天才と比べても仕方ない?

バッハやモーツァルトは天才だったからよかったんじゃないか。じゃあ、天才でない人はどうしたらよいのか?

簡単な話で、天才たちでさえ努力したのだから、まずは自分も努力するしかない。

努力せず手にした幸運は、いつまでもつつかず、やがてその幸運を手放さないようにする努力が必要となる。

幸運さえも手にしていない人。ゼロはいつまで経ってもゼロでしかない。どん底にいつづけるのもそれはひとつの選択でしかないと思う。1、いや、0.001でいいから、それをするには何か、考えるか、考えられないなら行動するしかない。モーツァルトは親元から何も考えずにウィーンに飛び出して行って、史上初のフリー音楽家として道を歩んだ。

努力しているのにもかかわらずめぐりあう不運についてはどう考えるのか。

バッハは、10歳になる前に両親が死んだ。30代で愛する妻に先立たれたし、先妻と後妻のあいだに20人の子どもをもったが、そのうち10人は10歳になるまでにみんな亡くなった。この時代、子どもは長く生きられないことがほとんどだった。

モーツァルトは、20歳くらいのときお母さんと一緒に旅をしていたが、そのときにお母さんは亡くなった。お父さんからはそのことでひどく責められた。さらに、妻との間に生まれた子ども6人のうち、4人は生まれてすぐ亡くなった。35歳で病死した天才は、低所得者が埋葬される共同墓地に埋められ、今でもどこに墓があるのかわからない。

ベートーヴェンは、結婚願望があったものの、結局はできなかった。それに、彼はキャリアの重要な時期において難聴という大問題に悩まされて自殺まで考えた。そして、あまり知られていないことだが、彼は成人してから亡くなるまで胃腸の不具合で悩まされ、一日ベッドで過ごすこともしばしばだった。

いずれにせよ、天才たちのきわめて人間的な側面が知れる部分だ。誰にでも不運は訪れる

 

自分だけが不幸だ、不遇だと思う人へ

一見、華やかに活躍している人、人よりも多くのものを持っている人、誰もがうらやむ人、というのは、その影で多大な努力をしていたり、人とは分かち合えない大きな悩みや問題を抱えていると思った方がいい。人生はそんなに単純ではないし、簡単に過ごせるものではない。今、何もないという人も、これからの10年間が同じだと保証できる人は世の中にはいない。

成功した人、人生を変えてきた人、失敗してもへこたれない人。

そういう人たちに共通するのは「へこたれない」ことだと思う。
耐えているのだ。

僕自身を考えても、色々なことに「耐えて」生きてきたと思う。
おかげで、お金がなくても何とか生きていけるんだなと思えるようになったし、活用できるリソースが少なくても何とかする力がついてきた。時間が経てば、自然と解決されることもあるということも学んだ。

そうなると、短期的なものごとにあまり振り回されなくなる。もちろん、心配や不安はある。けれども、それが長引かずに済む。

「耐えられる」というのも僕の強みだと思っている。
しかし、これは伸ばそうと思って伸びるものではない。過去の積み重ねで、そういえばそうだな、という程度のものだ。

したがって、その人の行動や能力に着目した特性と、人間性に焦点を当てた特性、これら2つの断面で強みを考えるとよいと思う。

 

どん底のときにこそ「本当の自分」がいる

本当にコアなものが何かを知りたい人は、いっぺんどん底まで落ちた自分を見つめた方がいい。過去にあったなら、それをいやいやながらも思い返すことだ。

そのとき、あきらめずにはい上がれた理由の何かがわかれば、それがあなたの強みだと思う。

今がどん底でないなら、たまたまうまく行っているときなら、あまり強みを考えても仕方ないと思う。安定した収入を他人から得られているなら、なおさらかもしれない。

なぜなら、あなたが所属している会社なり組織なりは、あなたの強みにお金を払っているわけではないからだ。

就職の時、「あなたの強みは?」と聞かれることはあるだろう。学生は必死になって就活に臨んで自分の強みを考え出し、表現しようとする。

だが、本来それは聞かれるからできるものではない。すでに、これまであるものでしか強みは出てこない。だから、すでに就職を決める大学4年生の時には、その時点での人間としての勝負があらかた決まっている。もちろん、その後の逆転劇などは様々にあるが。

安心してほしいのは、会社は面接の時に言ったあなたの強みに給料を払うわけではないということだ。
あなたの強みが対価ではない。あなたの存在そのものが対価なのだ。強みは、その一部分を構成するだけだ。

ではなぜ強みを聴くのか、考えるのか?
それは、単純にネタだと考えればいい。「○○の強みがあるからこいつを採用する」わけではない。その話をネタに、コミュニケーションが自然に取れるかどうか、自分の頭で考えた意見を話せるかどうか、一緒に仕事をしたいと思える人かどうか、この人は今後活躍してくれそうかが大切なのだ。

中途採用になると、確かに強みはより重要性を増すかもしれないが、いったん入ってしまえばそんなことを知ってる人がすべてではないし、やはりあなたの存在そのものが重要になる。

会社に入ったあとは、あなたという存在が会社の業務に従事し、労働の制約を受けることがバランスされて対価を得られるのである。

会社は、あなたの存在が会社という組織にむすびついていることに給料を払っている。もちろん、雇用契約はあるが、そんなものは形式的なものだ。誰もが24時間それを意識することはない。

フリーランスや起業家もひょっとしたら、強みだけで成り立っているわけではないということをよく知るべきなのかもしれない。

ほとんどが、運だろう。そして、それをつかんだあなたの力があなたを助けているだろう。もちろん、強みはいろいろな節目で役に立ったかもしれないが。

それを今さら持ち上げて、どうこうしようというのは時間のムダのように思える。
苦労して努力する中でこそ、自分の知らなかった強みがはぐくまれるからだ。調子がいいとき、輝いたとき、うまくいっていたとき、それは強みだけの問題ではない。

それを自分の強みのおかげだと錯覚してはいけない。なぜなら、それは周りの人のおかげ、あなたの謙虚な気持ち・態度、ひたむきな努力のおかげでもあるからだ。

強みは、壁にぶつかったときに思い出されればいいと思う。役に立たない知人よりも、あなた自身をきっと助けてくれる。

よって、自分の本当の強みが知りたいなら、どん底のことを思い出すか、これからどん底に落とされたときに死ぬほど考えればいい。

そして、それを忘れないためにどこかに書きつけておくことだ。

僕が言えるのは、とりあえずそれだけ。